「ホームシック」という言葉はよく知られていますが、「ホームロス」という言葉は聞いたことがあるでしょうか。
「ホームロス」とは
ある時、SNSでドキュメンタリー映画の紹介を見ました。
2020年に制作された16分の「I Don’t Feel at Home Anywhere Anymore(邦題「もう、帰る家がない」)です。
10年間海外留学していた中国人学生の、8日間の帰省を記録したものだそうです。
この映画、私はまだ見ていないので、詳しいことはわかりません。
ただ概要を読んだ時、強い既視感を覚えたのです。
私も、長い海外生活の間、帰省の度に周りからあれこれと詮索されるのは煩わしかったですし、親族から年齢的なことを引き合いに、身の振り方を”心配”されるのも、とても嫌でした
早々に帰省を切り上げたくなったことも、一度や二度ではありません。
どこにいても、何をしていても、
「ここは私の居場所じゃない」
そんな風に感じてしまう違和感を、私は「ホームロス」と呼んでいます。
ある程度の長期にわたる海外生活経験者なら、多かれ少なかれ、誰しも感じるものだろうと思いますが、実は「ホームロス」は、海外生活経験者だけの問題ではありません。
お盆やお正月に、地方の実家に帰省した時に感じる”煩わしさ”に、覚えがありませんか。
「ホームシック」と「ホームロス」の違い
地方出身で、30年の欧州生活を経験した私が考える「ホームシック」と「ホームロス」の違いは、以下のようになります:
ホームシック
ホームロス
こんな風に書くと「ホームシックはともかく、ホームロスなんて、海外生活してる自分に酔ってるだけじゃないの?」「海外にいることへの優越感の表れでは?」なんて思われそうですが、決してそんなことはありません。
できれば体験することなく、自分に合った環境で穏やかに幸せでいられれば、それに越したことはないと思っています。
いくら日本が生まれ育った母国だと言っても、海外に長くいれば、その間に日本の文化だって変わっていってますし、知らないことも増えていきます。
海外に行かなくても、故郷を離れて長くなればなるほど、同じ現象が起きます。
年月に応じて、感覚のズレは想像以上に生まれるのです。
そして、
・自分がどこに帰属するのか。
・自分は何をしたいのか、何をすべきなのか。
そもそも、
・自分は誰なのか。
そんな根本的なことが、わからなくなってしまうことがあります。
「アイデンティティの危機」という表現がありますが、まさにこれです。
そして、その究極の問いかけは「私は、何者なの?」です。
どこにいても「自分自身に対する違和感」しか感じなくなった状態。
それが「ホームロス」だと、私は考えます。
だから、ホームロスは、実は「居場所(ホーム)」の「喪失(ロス)」ではなくて、「私は、誰?」という問いかけに象徴される、自分で自分が見えなくなっている状態、つまり「自分自身の喪失」なのです。
先にも書いたように、ホームロスの感覚は、決して海外生活だけから生まれるものではありません。
同じところにずっと居たとしても、自分の周りの環境は変わっていきます。
そんな変化の中、人間関係や自分の役割について悩み、自分の在り方について考えてしまうことは、きっとあるはずです。
ホームロスにならないためには
自分を「ホーム」にするしかありません。
なぜなら、どこに行っても、何をしても、変わらずにそこにあるのは「自分」だからです。
人間関係、住む場所、話す言語、その文化特有の価値観…といった、外的要因に紐付けして「自分」を定義すると、そうした紐の”太さ”や”細さ”、あるいは”切れた紐”といった、その時そのときの状況に振り回され、自分という存在が不安定になります。
しかし、周りに紐付けするのではなく、ちょうど木が根を張るように、自分を主体とした環境を作り上げれば、揺らぐことのない安定を得るだけではなく、そこから更に、自分の想いに沿った成長や発展を遂げることも可能になってきます。
自分が置かれている環境や役割に定義されるのではなく「私は…です」と言い切れるようになれば、不安定さや違和感が消え、真に安定と納得感を得られます。
大切なのは、「自分を知り、自分で望み、考え、自分の価値観で判断する力」を鍛えることです。
uniicのプログラム「uniic compass」では、自分の人生を自分主体で進んでいくための自分基準、すなわち「自分コンパス」作りをします。
自分を知って、自分らしさを言語化することは、その第一歩です。
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最後に、このブログでご紹介した映画の予告編を載せておきます。
参考になれば嬉しいです。